最近の狂い

 

 

 

最近、俳優の松下洸平に人生を狂わされ続けている。

 

昨日9/17に、映画の「ミステリと言う勿れ」を観てきた。2022年1月クール放送の連続ドラマを観ていたからという理由もあるが、今回の広島編キャストに松下洸平がいると発表された時から密かに観に行くことを決めていた。

 


あまりにも良かった。これまで観た映画で1番と言ってしまいたいほどに。今後一生この映画に狂い続けることを確信してしまうほどに。トラウマになってしまうほどに。

誰かの芝居を観て「トラウマ」という感想が出てくる日が来ると思わなかった。さすがにあまりにも気を狂わされているので便利なメロという言葉を一切使わずに文章に残しておこうと思う。これは一種の挑戦である。誰かに公開するかは置いておいて。

 

 

■サブリミナル松下洸平

遡ること2012年。大野智主演の「もう誘拐なんてしない」というスペシャルドラマで彼と出会っていたらしい。らしい、というのは登場人物そのものとして観ていたからである。

他にも2014年の「不思議な選TAXI」2019年の「ラジエーションハウス」「連続テレビ小説 スカーレット」2020年の「MIU404」「東京タラレバ娘2020」と折々で触れていたのにも関わらず、わたしの中では長らく名もなき俳優であった。MIUに関しては見返した時に心底びっくりした。バカタレがよ。

2020年の「リモラブ」2021年の「知ってるワイフ」では顔と名前を認識していた。が、狂い始めたのはその半年後、10月クールに放送された「最愛」が完全なるきっかけである。

 


■3本のドラマ

「最愛」は大好きな「Nのために」の制作陣が再結成したと聞き、これは期待できると視聴したドラマであった。彼が演じる宮崎大輝という役は捜査一課の刑事で大ちゃんという愛称で人気を博した。わたしの中に見知らぬ古参人格がいるとするならば、最愛出の松下担は永遠の新規であるとツイートしていることであろう。彼の大ちゃんは漢気があって頼り甲斐があって優しくて、何よりも起きている問題と真っ直ぐ向き合う覚悟と人間の強さを知っている人であった。もう何度観たか分からない。台詞の言い回しや吐く溜め息の量や頬杖をつく仕草でさえ魅力的だった。


2022年4月の「やんごとなき一族」では財閥の次男・深山健太を演じた。少々ぶっ飛んだ設定の多いドラマであったが、名家の中で唯一の人格者であり、言うなれば王子様のような役柄を演じる彼を毎週楽しみにしていた。途中、健太が頭を強く打ち記憶障害になるシーンがあった。驚いたことがある。毎週健太に熱い視線を送っていたわたしが、健太が記憶を失った瞬間何も思わなくなったのである。健太の人格者としての言い回しは全て松下洸平手中にあったことまざまざと感じさせられた瞬間である。

アイドルに向けてしまうクソデカ激重感情とはかけ離れたところに、ミーハー心でこの俳優さん好きだな〜と思うことはよくある。茶の間でにわかで自分の中の一時期の流行りであり、ささやかな感情。多分、これまでのわたしであったら記憶を失う役を演じようがなんだろうが演じている人に興味があるのだから変わらず熱い視線を送っていたであろう。しかし健太が記憶を失っている期間は感情が無になり、記憶が戻ればまた元のように魅力を感じるという経験が新しく珍しいものであった。


ドラマは続く。10月には「アトムの童」が放送され、頭が抜群に切れるゲーム開発者・菅生隼人を演じた。スーツメガネのブレイン役まで回ってきた。勘弁してくれ。ほんとありがとね。前クールで感じた『こちらの感情までコントロールされている感覚』をもう一度味わいたかったのと、そこまで細やかなお芝居をされる方なら『役によって刺さる・刺さらないものがあるのでは?』という軽率な疑問を確かめるために視聴していた。話としても日曜劇場感がたっぷりで見応えがあった。結論は役柄によってキャラデザがきちんと違うのに言い回しも仕草も何もかも刺さりすぎる、であった。完敗である。

 


■気になる存在

この3クールで完全にミーハー心を超えて気になる存在となってしまった。実は他にも、自粛期間中に3日間とも配信で観劇した「ミュージカル スリル・ミー」を、過去5年間やられていたと知った時は血を吐くかと思ったし絶対私(ネイサン)役であると思ったしそうだったので血を吐いた。2015年の舞台音源CDが発売されていることを知り軽率に購入し『僕はわかってる』というナンバーを聴いた時、狂気にも種類と緩急があることを耳のみで知りこのままじゃ体内の血が無くなると思った。

また、わたしがコロナにかかってしまった際、わりかし症状が重く、熱は高く咳も鼻も止まらず喉は焼けるように痛く味覚も嗅覚も感じなくなっていた。中でも耳鳴りが厄介で夜も眠れなかったため、一夜のみ放送されていた「松下洸平オールナイトニッポン」を聞いてみた日もあった。知識厨なので生い立ちが知れたという収穫があったし、トークがシンプルに楽しかったのでその時間だけは症状を忘れられたという真夜中のいい思い出になっている。

他にもAスタジオやブンブブーンや堂本兄弟に出演されていたらちゃっかり見たし、SNSでも情報は見ているし、TVerのお気に入り欄にも名前が入っている。側から見たらファンである。でも全ての情報を追っているわけではないし、全ての作品を観ているわけではないから恐れ多くてファンと名乗ることはできない。めんどくさいオタクマインド所持者ですまない。でもすごく好きだと思った。


ならせめて現場を観るべきだと思い、2023年9月に「こまつ座  闇に咲く花」を観劇した。たった2週間前の話。向かう電車の中はずっとドキドキしていた、乙女かよ。彼は、戦争で亡くなったとされていたが本当は生きていた息子・牛木健太郎を演じていた。PTSDで記憶障害が再発してしまうシーンがあった。…………これはまずい。わたしはまたあの感覚を、そして今回は生で味わえてしまうのかと思った。記憶を失いカタコトで言葉を紡ぐ健太郎が、劇中の表現を使うならば『記憶の小島が陸に浮かんでくるかの如く緩やかに』しかし確実に口調や言い回しや声色が変わりながら正気に戻っていく様子を観て鳥肌が止まらなかった。なんて恐ろしい俳優なんだと思った。

 

 

■ミステリと言う勿れ

そして昨日9/17に「ミステリと言う勿れ」を観た。やっと本題に入った。わたしはこの映画の感想が書きたくて親指を動かし始めたのに前置きが江戸時代よりも長くなってしまった。

主人公の久能整(菅田将暉)が持つ達観した感性と哲学的な言い回しで謎が解決されていく物語であり、今回の広島編では狩集家という曰く付きの名家の遺産相続事件が舞台となっていた。相続のたびに代々殺し合われてきたと噂されるほど人が多く亡くなってきたらしい。こんなん好き。それだけしか知らない状態で映画館に座っていたし、開始早々松下洸平はその名家の人間ではないことに気付き『何役だ?この映画では狂わないかもな』とさえ思っていた。どう考えてもフラグである。

名家の女の子・狩集汐路(原菜乃華)の、初恋の相手であり名家御付きの弁護士の孫・車坂朝晴が彼の役であった。2人は互いを『しおちゃん』『あさちゃん』と呼び、しおちゃんはあさちゃんを見ると嬉しくて飛びつくし、あさちゃんは買ってきた焼き芋を半分こして大きな方をしおちゃんに渡していた。歳上で聡明で包容力があり口調まで全てが穏やか。そりゃ恋をする、なぜならわたしがもう好きだから。もうこれだけで映画代の元は取ったし寧ろ釣りがきているとさえ思った。単細胞とはわたしのこと。誰ですか?狂わないかもなとか言ってた人。

 

ここから話は複雑に展開されていくが全てをすっっっっっっっっっ飛ばして結論を言う。

※※※ネタバレを含みます※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


犯人でした。

オイオイオイオイ勘弁してくれ。しかも、殺人という事象そのものの認識はあるが、自分が行った事・使命としての罪の意識はなく、必要だと信じて疑っていないタイプの。蔓延っていた惨虐な言い伝えを教え込まれて汐路の父親を殺害していたし、その他の殺すつもりもなかった人も殺していた。

挙げ句の果てに、穏やかな口調で『(汐路の父親を殺せたのは幼い頃から慕ってくれて、いろんな話をしてくれた)しおちゃんのおかげだよ』と言うのだ。好きな声で好きな表情で、死んだ目で。この戦慄の芝居を一生忘れないと思う。ショックで泣き崩れる汐路役の菜乃華ちゃんの絶望の表情も。

もう最悪な台詞が沢山あった。裏切りを通り越して倫理観がおしまいの台詞が沢山。狩集の家を『バカばっかり』と心底軽蔑し見下し吐き捨てる様子は殴られたかのような衝撃だった。もっと最悪なのはわたしで、この芝居をする松下洸平が観れるなんて最高だと、そう思った。


思えば上につらつらと書いてきた、わたしが今まで観てきた作品の人物たちは『表に立つ光側』であったり『罪なき被害者側』であることが多かった。味方で人格者で優しくてかっこよくて。そこに突然ブチ込まれた救いようのないほどの圧倒的な悪を真正面からデッケ〜〜〜〜〜〜〜〜スクリーンでまともに浴びてしまったわたしは気が狂う他なかったのである。可哀想。あまりにもわたしが可哀想だろ。軽率に観に行って、これはわたしの心も奪われてしまうのでは♡とアホ面でときめいていたところにこんな仕打ちあるかよ。ありがとうございます。

15:30に観終わったのに、夜中の2:20に作成中。明日公開したろか。ずっと狂ってて可哀想すぎる。現在放送されている「最高の教師」のスパダリ夫・九条蓮の芝居もドツボだし、次クールも「いちばんすきな花」の春木椿もきっと好きなんだろう。なんかもう名前から好きやろが。

でもこの車坂朝晴という役に一生狂わされ続けるんだと思う。なんかもう名前から気が狂うやろが。全てが整われたあの状況でまんまとひっくり返してきた、あの戦慄の一瞬を超える役はあるのか?まだ未視聴の作品も沢山あるからこれからも漁り続けていく気ではあるし、彼が活動を続けていくとどんな作品に出会うか分からない。だから芝居は面白い。けど確実にわたしの中での分岐点のような大きな作品になってしまったことに変わりはない。

 

余談だが、あさちゃんは完全悪であると思ったが、幼い頃の思想が固まる前に使命としての殺人は正当なものであると教え込まれてきたという点では彼も被害者である。子が親と家を選べないことをここまで惨く描かれた作品は初めて観たかもしれない。彼が車坂の家に生まれずに別の家の子供として穏やかに生活していたらと思うと本当に胸が苦しい。絶対スパダリ日本一になっていただろ。ねえ、あさちゃん。これから、使命としての罪の意識がないことをどうやって償っていくのよ。

 


アイドル以外に、俳優に、芝居にここまで人生を狂わされているのは初めての経験である。今の密かな夢としては彼とSixTONESが作品でガッツリと共演すること。楽しみが増えた。しかし、2度目のミステリをいつ観に行くかを考えている時点でこのブログも通過点にすぎないのだろう。

 

 

 

 

2023.9.18